リンゴ・スター盗難事件・・・You're Sixteen
63年のことだ。
この年早々に発表した Please Please Me が爆発的に売れ、たちまちビートルマニアが誕生してビートルズの4人は全英中のアイドルスターとなった。
ベーカー街221Bに緊急連絡が入ったのはそんな騒動が始まってすぐの頃だ。
連絡してきたのはリンゴ・スターだった。
「たいへんだ~。泥棒が入って、大事な『スター』が盗まれたんだ。折角スターになれたのに、これじゃあ元のスターキーになってスターの座から転落しちまう。お願いだから犯人を見つけて取り返してくれないか」
シャーロック・ホームズが駆けつけると、リンゴは金庫を指差し、「この中に『スター』をしまっていたのに空っぽなんだよ」と泣き出しそうな顔で訴えた。
金庫を開けると、たしかに中は空っぽ。
代わりに指輪をはめた脂肪の塊がころがっていた。
「犯人の奴め。この私に大胆不敵な挑戦状を叩きつけてきたな」とシャーロック・ホームズ。
そして、リンゴに向かってこう言った。
「安心したまえ。犯人は分かったし、動機も分かった。
指輪(リング)をはめた脂肪(ラード)に、スターの盗難。これはスターリングラードという謎かけだよ。
つまり、犯人はスターリンということだ。
彼も君のように全世界で愛されるスターになりたいというのが犯行の動機だね」
リンゴ:
「じゃあすぐに逮捕してください」
ホームズ:
「逮捕は出来ない。国際問題に発展するからね。隠密に事件を解決したほうがいい。秘密諜報部員のジェームス・ボンド君に頼もう」
「やあやあ、ボンド君、君が来るのを待ってたよ。
『スター』を取り返しにきたんだろう。
残念ながら、ここにはないんだ。私のとこからも盗まれたんだよ」
さ、ど ~ぞ、とスターリンが金庫を開けると、金庫は空。床に穴があいていた。
ボンドが「いや、佐渡の人間の仕業じゃない。ほら、鞭の遺留品があるだろう。マルキ・ド・サド侯爵の仕業だよ」というと、スターリンはたちまち烈火のごとく怒り「貴様、独裁者に逆らって講釈を垂れる気か~! 出て行け~!」と追い出されてしまった。
ボンドはパリに向かい、サド侯爵を訪ねた。
ボンドが「スター」を返してくれるようにサド侯爵に言うと、
「ちょうど日本から届いたばかりなんだ。もって行くといい」と言って青森産の「スターキングリンゴ」を手渡してくれたのだった。
リンゴがスターのキングになったのはこういうわけだ。
スターキングデリシャス。