ドラキュラ伯爵の哀愁(かなしみ)・・・The Small Hours
天(そら)に敷き詰められたる星辰(ほし)を褥(しとね)に乙女は熟睡(うまゐ)す。
焚(た)き籠めた沈香(ぢんかう)の香色(かおり)に包まれて、顔容(かんばせ)穏やかに夢を夢みん。
傍らに佇立(たたず)むか黒(ぐろ)き像(かげ)のひとつ。
眼眸(め)に恋の焔(ほむら)を燃やし、憂悶(うれひ)の光景(ありさま)。
吸血鬼(ドラキュラ)伯爵なればなり。
来し方を捨ててこの恋に身を任すべきや否や。
吾が心に生じたる妖事(ふしぎ)に煩悶(とまどふ)ばかり。
思案(ふしぎ)に身をまかせ、つひに決意をぞ固めたる。
堕(お)ちたる光の天使(サタン)に違背(そむ)きて神を崇め、乙女を得ん。
なんぜう、逡巡(ためら)はんや。
危惧(おそれ)の心を捨てよ。
愛人(をとめ)の唇(くち)に接吻(くちづけ)してほんたうの快楽(たのしみ)を知るは今ぞ。
膝を折り、乙女の唇に顔を近づける。
歓語(ささめごと)を囁きながら。
あっ、首筋を噛んじゃった。
前回、洒落で書いたら意外と評判が良かったので続きを書く。
戦後の国語教育は漢字の読み、字義を制限しているので、慣れてないと思うけど、漢字は1語に多義があり、字義さえ違(たが)わなければ、どんな読み方(訓読み)をしてもいいのだよ~という意味でモノした。
関心を持ってくれると嬉しいのだが。
夜の話だから音楽は Small Hours の End Of The Night にしよう。
聴き慣れた曲のはずだが、ロンドンの Bridge House のライヴだというこの音源はスタジオ盤と少し違うので面白い。