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織田作之助「六白金星」初版本・・・The Outer Limits

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三島書房刊。昭和21年9月30日発行。定価15円。

装丁:鍋井克之



目次。

六白金星。
髪。
表彰。
道なき道。
訪問客。
神経。

戦中から戦後にかけて執筆された六篇の短篇集。




織田作は、大阪と切り離しては語れない作家だと言われる。

戦中から戦後すぐに執筆されたこれら六篇の短編はいずれも大阪の庶民を描いた作品で、昨日紹介した2作品とは趣が少し違う。

つまり、彼本来の作風だ。

戦時中に書かれた「表彰」がイチバン古く、戦後の昭和20年大晦日から書き出して正月3日に脱稿した「六白金星」がイチバン新しい。

このうち、「髪」「訪問客」「神経」は私小説スタイル。

もともとの織田作文学は、孤立した人間の嫉妬や自尊心に悩む暗い情念が潜んでいるが、この短篇集収録作品はいずれもそうした人間が描かれている。

と言って、後味の悪い暗さはない。

夫婦善哉」で登場したときから西鶴が引き合いに出されたように、人情味溢れる軽妙なタッチが相殺して、むしろ爽やかさを醸し出している。

敗戦後すぐ、闇屋なしでは生きていけなかった「訪問客」では、軍需物資を隠匿したり横流ししていた軍の将校連中への憤懣も顔を出している。







「表彰」のお島は、亭主は女道楽で、妾を持って3人の子供を作り、自分には子がなかったので養子を育てたが、この養子がどうしようもない不良になって、傍(はた)から見たら不幸な人生だが、本人にそんな自覚はない。
精一杯日常を生きている健気な女性だ。
そんな女性に注ぐ織田作のまなざしは優しい。
ラスト、空襲で焼け出されたので、鳥取の妾宅に身を寄せようと亭主2人で汽車に乗るが、涎を垂らして居眠りしてるお島の姿を眺めていた亭主は、行く先の変更を決める。
つまり、亭主はやっとお島と2人で老後を過ごそうと決意する含みを持たせているのだ。

となりゃあ、ガレージファンにはいまさらだが、ニューメキシコのバンドで Outer Limits - Alone And Crying で終わりにしよう。







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